[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
光流先輩が風邪をぶり返した。
今回の俺のいらぬおせっかいの所為で結果的に光流先輩は風邪をひいてしまい おまけに女装までして大乱闘を繰り広げた挙句 風邪をこじらせてしまった、らしい。
だってあの寒空の中あんなミニスカートはいてりゃ風邪だって酷くなるさっ。 なんでわざわざミニスカートの制服を着るんだよ?! しかも恐ろしい事に意外と似合っていたから更に吃驚だよ全く!! 似合っていたと思っちゃう自分にもびっくりだけど
光流先輩が風邪をひいてから 何となく 気の所為かもしれないけど 忍先輩の目がこわい。 顔は笑ってるんだけど、目は笑ってないんだ・・・ しかも俺だけに限定で。 これは 光流先輩に風邪をひかせたのが俺の所為だから、な気がしてならない。 いやきっとそうなんだ・・・ あぁ 本当に俺ってヤツはもう・・・
コンコン
「み、光流先輩?」
普段 同じ寮内で生活をしている寮生の部屋へ訪れる時に、蓮川はノック等滅多にした事がない。 老朽化の進んだ寮は壁が薄いので廊下から声を掛ければそれで事は足りてしまうからだ。 しかし今回ばかりは、隣室の、いつも自分を苛めてばかりいる先輩達の部屋へ 小さなノックと共に遠慮がちな声を掛ける。 先程この部屋の住人の一人である手塚忍が、所用で部屋を開けたのを偶然見掛けた蓮川は これ幸いにと隣室へ訪れる機会を逃さなかった。 あの食欲魔人の光流が風邪の所為で食事をロクに摂れていないらしい。 この事が寮生の間で大きなどよめきを呼び、小心者の蓮川の神経を更に減りすらしてくれた。 蓮川の行為を快く思っていない忍が居る部屋へ 今の蓮川がぬけぬけと訪れるという事は、蛇に睨まれた蛙と同じくらい恐ろしい事なのだ。 胃、胃が痛い・・・ 心の中で小さく呟き、返事の無い211号室の扉をそうっと開ける。
おそるおそるといった動作で部屋の中を覗くと、寮生が使用している二段ベッドが目に入る。 しかし光流の使用している上のベッドはカーテンがきっちりと開けられており誰も横たわって居なかった。
「あ、あれ・・・?」
パタンと小さく後ろ手で扉を閉める。 拍子抜けな自分の声が静かな室内に響き、必要以上に緊張していた身体から力が抜けた。 光流の病状が良くなった等、まだ蓮川は聞いてない。 確かに風邪を克服した光流ならば、己の空腹を満たす為に食堂や近くのコンビニへひょろりと出掛けるだろう。 だがそれには、おそらく忍も同伴する筈である。 いつもの光流ならそんな事は微塵もしないだろうが、人外魔境な光流が寝込んだ程の風邪だ。 また道端で倒れられても迷惑だ、と言いながら付いて行くに決まっている、と蓮川は思っている。
光流は 忍にとって特別なのだ
誰もが判る様なはっきりとした態度や言葉で、あの忍が意思表示等した事は決して無いが 他の寮生よりも光流と関わる事が多かった はっきり言えば、苛められたりからかわれたり雑用を押し付けられたりした頻度が多い 蓮川は凄まじい鈍さの神経を持ちながらもそれを感じ取っていた。
「おかしいな。どこ行ったんだろ・・・」
入り口でスリッパを脱ぎお邪魔しますと小さく呟いて部屋に進む。 先輩居るんですか?入りますよ~と一応断りの言葉を述べながら二段ベッドの側まで寄って行った。
「・・・ぅ・・うん・・」
もぞりと、二段ベッドの下のカーテンが動く。 誰も居ないと思っていたそこから微かに声が漏れて、蓮川が傍から見ても判る程大きく身体を強張らせた。 カーテンが半分程開いていたそこに見えたのは、忍のベッドで丸く蹲って眠る光流の姿だった。
「び、びっくりした~。先輩そこにいたんですか」
自分の胸に手を当てて大袈裟な溜め息を付きながら肩から力を抜く。 まだ体調が思わしくないのであれからずーっと忍のベッドで養生していたらしい。 肩まですっぽりと布団を被り子供みたいに眠っている。 伏せた瞼の長い睫毛が頬に影を作り、その頬が風邪の所為で幾分か削げて見えまるで別人の様だった。 明るい色をした柔らかい猫っ毛は寝癖であっちこっちに飛び跳ねている。 普段見た事のない光流の表情から目が離せなくなり、蓮川はその場にしゃがみ込む。 その拍子にガサリとビニール袋が床にぶつかった。
「・・・あ」
ロクに食事が摂れない光流の為にと、お見舞いと称して蓮川が近くのコンビニで買ってきたものだ。 いつも付き合わされて買い物に行くので光流の好みの食べ物等知りたくなくても自然に判ってしまう。 一般的なスポーツ飲料と、柑橘系のゼリー。 普段は質より量の人だけど その量より質な、ちょっとお上品そうな綺麗な色合いをしたゼリーをたまに光流が好んで買っているのを 蓮川は知っていた。
なんとなく これなら食べてくれるかな、と思わず買ってきちゃったけど どうしよう。
目の前で眠り続ける先輩の顔を覗き込むように膝に頬杖を付く。 いつもは鬱陶しい程の元気さを纏わり付かせてくるくる変わる表情が 今は憔悴しきった、蓮川が見た事がない表情を張り付かせて眠っている。
先輩って、良く良く見ると本当に綺麗な顔立ちしてんだなぁ
この場に似つかわしくない感想をぼそりと呟いて、自分の声にはっと我に返った。 そうじゃないそうじゃなくってえぇっえぇっとそのぉあぁ~っ しゃがみ込んで一人百面相をしている蓮川の気配を感じてか光流が小さく寝返りを打つ。 ぎくっとその場に固まり光流を凝視していると、微かに瞼が動いてゆっくりと瞳が開いた。
「・・・のぶ?」 「あ、いえあの、おれです、蓮川です」 「・・あぁ、すかかぁ。どした?」 「あ、あのえっと」
シドロモドロに話す蓮川を光流は熱で潤んだ瞳で見上げている。 その視線の近さが自分がしゃがみ込んでいる所為で 実は結構至近距離な事を今更ながらに蓮川は意識した。 意識し始めた蓮川は光流から目が離せなくなり、それを訝った光流は微かに首を傾げる。 その時、光流は寝ていた所為で乾ききっていた下唇を、無意識にぺろりと舐め上げた。 血色の悪い顔色に、ちらりと見えたその舌が嫌に赤くて 蓮川の頭の中は真っ白に素っ飛んでしまった。
「すか?」 「・・み、光流先輩」
ドックンドックンと自分の鼓動だけが頭の中に鳴り響いて廻りの音が聞こえない。 先輩から目を離せば良いのに、逆に先輩の訝った顔が近くなった。 そのきょとんとした表情が可愛いなぁなんて 絶対普段には言えない感想を暢気にも思っていた矢先
「蓮川」
まるで冷水を掛けられたように背筋が凍り付く。 ピキーンと、耳が痛くなるような張り詰めた空気を感じ取って蓮川はそこから一歩も動けなくなった。
「何の、用かな?」 「す、す、す、」 「うん?」 「すみませんでしたーーー!!!」
恐ろしいほどの素早さで立ち上がると、脱兎の如く部屋から飛び出していく。 立ち上がった拍子に派手な音を立ててコンビニの袋が転げ落ちたがそれにも気付かずに 蓮川はクラクラする頭を抱え込みながら走り去っていった。
「なに?」 「・・・ふむ」
その床に血痕が落ちていたのには眉を顰めたが ガサガサと転がっていたビニール袋を拾い上げて中を覗いた忍は思わず苦笑した。 片肘を付いてぼんやりと起き上がった光流にほらと袋を渡してやる。 同じ中身が入った袋を机の上に置き、開け放たれたままの部屋の扉を静かに閉めた。
「おれってヤツはっ!!!おれってヤツはぁっ!!!」
超人的な速さで走り抜けていった蓮川は、その日点呼間際まで戻って来る事はなかった。
end
20081022 byめぐむ
無駄にだらだら長くなっちゃった~。
風邪で弱ってる光流に思わず盛りそうになったスカちゃん・・・
これ頭ン中にずーとずーっと放置してあって
やっとこさup出来ました。
出来たならドラマと平行くらいにupしたかったよ(苦笑)。
とりあえずupしちゃうけど、後で書き直すかも・・・